晩白柚ルポルタージュ

熊本に住む33歳の日記です。 2019年5月までトロントでワーホリをしていました。一人旅、カレー、キャンプなどについて書いています。

八千代の里へ~まち歩きレポート(4)山鹿温泉

寒い。寒すぎる。ここ数日の天気はいったいどうしたというのでしょう。気象庁によれば、1月27日の熊本の最低気温は-5.2度、その天気概況は「曇時々晴一時雨、みぞれを伴う」。いつものように薄着で病院へ出かけようと家の外へ出たら、ものの一瞬で僕の体は凍りついてしまいました。こんなに寒い日は、ゆっくりと温泉に浸かるに限ります。

 

 

山鹿温泉へ

この日も天気予報では「一時みぞれ」などとのたまっていました。ええい、そんなものは関係ない、僕は温泉に浸かりたいのだ。

そうして僕は、熊本市から北へ車で1時間ほどの山鹿市にやって参りました。この山鹿が有する温泉は、熊本県内でも有数の歴史あるものです。保元の乱で落ち延びた武将がこの地で山狩りをしていたところ、傷を負った鹿が湯に浸かっているのを見た、そしてこの地に山鹿という名が付けられた、なんて嘘か本当かわかりませんが、そんな伝説も残っているようです。

 

さくら湯 

今回訪れたのは、2014年に開湯されたばかりの共同浴場「さくら湯」です。2014年というと「できたばかりじゃあないか」というふうに思いがち。しかし、ひなびた温泉が好きな僕です。僕がそんな湯に浸かりにきたわけがありません。

もともと「さくら湯」は370年前に歴史の端を発し、特に明治年間に建てられた大規模な木造温泉が、1973年に解体されるまで長く市民に愛されてきました。2014年に完成したのは、明治期の風情を色濃く再現した木造温泉です。

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当然ながら浴場内部の写真を撮ることはできなかったので、この雰囲気をお伝えすることができずとてもくやしい限りですが、「こ、これが明治の温泉か!」と驚かされる、ゆかしい内装でした。湯つぼに入って壁を見上げると、目に飛び込んでくる絵の広告たち。「米 酒 酢 塩こうじ ○×酒店」「銘菓 ○○最中 △□商店」といった情緒あふれる絵が並びます。

昭和の雰囲気が残るひなびた銭湯、というものには何度となく浸かってきました。木造温泉であるさくら湯はそれらともまた一線を画しているように思います。

強いて苦言を呈せば、湯つぼがぬるいです。あとに訪れる八千代座の受付のおばさんも「あそこは雰囲気はいいけどぬるいのよね‥」とぼやいていました。

 

八千代座 

さくら湯を出て、豊前街道を北へ歩くと、山鹿といえばおなじみ「八千代座」が現れます。八千代座は1910年に建設された芝居小屋です。八千代座を訪れるのは2度目、15年ぶりのはずですが、もはや当時何を見たのかさっぱり忘れています。

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天井広告や独特の形をした枡席などは、明治の芝居小屋の雰囲気を残していて、なかなか見応えのあるポイントです。

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案内人のおばさんが身ぶり手ぶりを交えて解説してくれます。楽屋や舞台の奈落まで見学することができるので、500円の見学料を考えるとお釣りが来るぐらいではないでしょうか。

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桜町温泉

そうはいっても、寒いです。八千代座を出たら、また寒くなってきました。今回山鹿にやってきたのには、もうひとつ理由があります。僕がひそかに注目しているウェブマガジン「ひなびた温泉研究所」で取り上げられていた、「桜町温泉」を訪ねるためです。

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ここは予想以上にひなびていました。のっけから「桜町温泉」の「温」が落ちてしまった看板が出迎えてくれます。180円という入湯料も、昔ながらの共同浴場という感じがして、良心的です。

 

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誰もいなかったので浴場の写真をこっそり撮りました。あちこち剥がれてしまったタイルの跡が無常感を誘います。ぬるかった「さくら湯」と違ってこちらはほどよい温度。

「ひなびた温泉研究所」が、

じっさい本当にこの湯は気持ちが良いのである。
見た目は普通の無色透明だが、ph値が高いのだろう、
まるでウナギの・・・いや、乙女の柔肌のようにトロっとした湯ざわり。
一度浸かると、そう簡単には上がりたくなくなるような中毒性がある。
(ひなびた温泉研究所)

 と言っているとおり、まったく誰も入ってこないこともあって、時間を忘れてかなり長い間ぼおっと湯船に浸かっていました。

 

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番台のおじさんは思わず二度見してしまうほど坂本龍一に瓜二つでした。坂本龍一がこんなところで番台をやっているなんて‥と思わず吹き出しそうになりながら、桜町温泉を後にしました。
 

2018年1月28日